負けるな左利き!
左利きは遺伝する?
生まれてきたとき、左と右どちらの手を優先的に使うか、それは五分五分の話です。
しかし大概は、左手を使っていても右利き社会に合わせ、右に矯正されるもの。
我が家の場合は、代々必ず世代ごとに一人以上左利きがいるせいか、大きな矯正はなく、それを個性として左利きのまま生活しています。自分の叔父二人、祖父の兄弟とその娘さん。近い親類だけでも4人います。
そういう人間でテーブルを囲むと、その瞬間だけは自分達がマイノリティーであることを忘れてしまいます。
自分もまさにその世代の一人として、左手でモノを使い出してしまったわけで、字を書く場合以外左手を使用した生活を送ってきました。これほど家系で左利きが多いのは、何か遺伝子要因があるのかと疑問に思ってしまいます。
今だに会うと言われるのですが、中学生のころ机を並べていた女の子が、自分が右手で字を書きながら、左手で消しゴムを使っているのを見て、「この人すごい!」と思ったそうです。自分では意識しないで使っていますが、他人から見ると不思議に思われていたようです。
ただですね、’左利きは器用’というのは全ての左利きに当てはまる話ではありませんから。
前述のように、どっちの手でもそれなりに何かをこなすことはできます。それは右利きの人が左手を使うのとは違う、ある意味’器用さ’があります。
ですから、さも何でもうまくできるのかというと、そういうわけではありません。
単純に両手を一緒に使えるというだけで、自分などは完成したもののあまりにも下手な出来に、毎回自己嫌悪に陥っているのですから。
左利きは早死にする?
左利きは早死にする。なんて衝撃的な文章を以前読んだことがあります。
何でも、世の中の右利き社会に合わせて生活すると、自分自身では不便さを意識していなくても、知らぬ間にストレスが溜まるので、それが原因で長生きできないそうです。
確かに、右利きの人は意識しないでしょうが、世の中左利きには不便にできています。
ドアノブ一つまわすのでも、自然と先に出る左手でまわすのは、意外と難しいもの。しかも手の作りと、逆方向に回さねばなりません。自動改札も、左手で切符を入れるのは至難の技。食事をするのだって、ぶつかるのを気にして左端をいつも探してしまいます。
何をやっていても、左手を使っていると、「なんだ、ぎっちょ(普段は差別用語で使ってはいけません)か!」
と、突っ込まれます。それを長所と見てるれるより、迷惑と思われることの方が多いです。
仕事も楽じゃありません
日常ですらそうなのですから、仕事なるとさらに大変です。
教える親方々も、今まで左利きに教えることなんてなかったわけですから、普通に教えていてもなんか違和感を感じながら、しっくり来ないような気持ちで教えているようでした。
習う方も、慣れているとは言え、やっぱりイメージが掴みづらく、どうしてもうまくできません。
例えやり方がわかっても、右利きのやり方と同じようにやるのは難しいです。
針金を締める場合、通常右手でペンチを持ったら、逆らわず右まわしに締めるでしょう。ねじ締めの要領です。
では、左手でペンチを持ったら、左まわしで締めちゃってもよいのか?
答えは×です。
仕事にはリズムも大事なことです。その左回しに締めた針金をはずす場合、左利きの人なら違和感なくはずせますが、ほとんどの人が右利きでは、右利きの人がはずすことを想定して締めておかねば折角ペース良く進めていた仕事も、その針金はずしでもたついて、全体の流れを阻害してしまうからです。
ですから、左で持っても右回し。最初のうちは、今以上に締めが甘くて、よくやり直させられました。
中でも一番苦労したのが、植木屋の基本である、男結びの締め方です。
ほとんど全ての縛りに用いられる、これができなければ植木屋ではない縛り方の一つ。
こればかりは、逆手で習うのは難しいので、右利きで縛りを覚えました。
しかし、頭でわかっても、所詮使うのは使い慣れない右腕。
力の入りも足りず、どうしても緩んでしまいます。これは随分、右手でできるまで練習してました。
こんなことがいくつもあるわけで、何度「才能ないな」と断念しようしたことか。
負けるな!左利き
以前から比べると、仕事も今では随分できるようになってはきました。
右利き道具を左手で使うのにも慣れてきました。
ここのところ使用頻度が増えているエンジンバリカン、本来なら左手が後ろ、右手が前で使用するように作られています。
これを、自分のように右手を後ろ、左手が前で使うとどうなるか、一番困るのは排気ガスを自分で浴びてしまうこと、次に旋回範囲が変わり、勢いをつけて使って、自分の足も切ってしまうこともありました。
大きな道具じゃなく、鎌一本にしても左手で使うと刃が体の外を向きます。
その状態で、体の前で、90度横向きに鎌を使うことで、右利き用の道具だって使いこなします。
人間やってやれないことはない、努力していると何とかなります。’左利きは器用’だったらこんなに悩まずに済むのですけど、人並みに道具を使うことですらこんなに大変なのですから、腕を磨くには人の倍以上の努力がいります。
ただし、他の左利きの方々はこういうわけではないと、お断りします。
以前、掲示板に左利きで苦労していることを書いたら、俺も、私も左利き、なんて反響がありました。
同業者で左利きという方にも会いました。
自分ほどではないにしろ、皆さん苦労しているのは間違いありませんし、同業者の方とも苦労話で盛り上がりました。
一部、左利き用の道具を使っているなんて言ってもいました。
そうやって苦労して覚えてきた左手の使い方と技です。忘れようがありません。
苦労は絶えませんが、これも自分の正道を歩けない生き方の表れと割り切り、楽しみながら精進に励みたい気持ちです。
今更直そうなんて思えないですしね。
共に負けるな!左利きの皆さん!