江戸時代、文化文政期(1804〜1830)に、骨董商の佐原鞠塢が草花の鑑賞を目的とした花園として開園。当時は文人たちのサロンとして用いられていました。
当初360本の梅の木を主体としており、百花園という命名を受けました。
こちらの秋の七草は、現在でも大変有名です。
昭和13年に東京市に寄付、昭和53年には国の名勝・史跡に指定されております。
唯一現代に残る、江戸時代の貴重な花園です。
向島百花園は、当時の文人たちのサロン的役割を果たしていたわけですが、単なる社交場ではなく、遊びも織り交ぜながら石碑を築いたり、隅田川七福神を作りだしたりと立体的で歴史に残る園を築きあげました。
これが現在まで残っていることにうれしさを感じます。
建物の焼失などから、一時は園そのものが亡くなってしまう危険もあったのですから。
当時の人々がどういう思いで集ったのか、この場所に来て、その空気に少しでも触れられるとさらに親しみのわく場所です。
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向島と言う地は、東武線を利用する者ならよく知っています。
しかし、この区間は快速が止まらなかったり、本数が少なかったりなかなかローカルなのですが、東武の鉄道博物館や、こちら百花園など、家族で楽しめるエリアでもあります。
と言いながら、今回この取材で初めて駅に降り立ちました。車では通るのですけどね。
本来なら秋の七草を見るために、10月に来たかったのですが、仕事の関係上お盆明けの8月下旬に来ております。折角来たわけですから、その時期咲いている花をド〜ンとまとめて掲載します。
こちらを名庭に入れてもよかったのですが、個人的に百花園が花々を見せるための園であることや石碑(後ほど説明します)や七福神目当てになることなど、庭園ではありますが名庭とは言い難いかなという判断で、通常の珍道記の掲載にしました。
百花園に向かう途中で、おしゃれなベンチを発見。石をくり抜いて一人がけ用のベンチができています。思ったより座り心地いいですね。
緑に囲まれて気持ちがさわやかです。
近年の夏は富に暑いですね。上記の鬱蒼とした樹木の見えるところが向島百花園です。少しだけ暑さが和らぎます。
早速夏の花の代表、ムクゲと石製のフェンスに絡まるテイカカヅラの花を発見。
看板の矢印に従って入口の前にでました。
公園か?とも思いましたが、ここも一部のようで児童遊園となっております。うちのお子様と来ていたら、きっとここから動かないでしょう。
児童遊園の奥に、園内への入口があります。
入場料は大人150円。相変わらずうれしい価格です。
入口前には、百花園由来の碑や隅田川七福神の説明看板があります。
園内に入って、先ず目にするのが石碑の数々。計29の碑があります。これはこの園の開園のために力を貸した当時の文人たちの足跡でもあり、百花園の名物のひとつです。
こちらの庭門を抜けたら、そこから本編の始まりです。自由に歩いて、園内の今咲いている花や実を出来る限り網羅してみました。粋を見せて、ここからはひらがなで名前を書いていきます。
’虫ききの会’と書かれた外灯。毎年この時期になると、マツムシ、スズムシなどを放して夜間公開が行われているとのこと。
入口が急に狭くなることで、意識がその奥に集中します。そしてくぐりぬけたら、その先の広がりを強調できる、茶庭など日本庭園の見せ方の一つです。
一気に広いエリアに出ました。
左手には売店などもあります。中は特に順路はなく、また岐路が多いので何度か同じ場所を通ることになります。
さるすべりの花のやわらかい色や、露出した水琴洞が目を引きます。
これからの道筋は大体がこんな感じ。作られていない野の道を感じさせます。
せんにんそう
かくとらのお
だんごぎく
のうぜんかずら
くこ
うめもどき(実)
かぼちゃ
へびうり
ごーや
この古いお堂は福禄寿尊堂です。
上記のつるものの棚の間にあり、思ったより地味。だって、墨田川七福神と言えば、ちょっとは知られたツアーですからね。
歳の初めに行うのが一年縁起よく過ごす秘訣らしいですが。
それもこれも、こちらに福禄寿のお堂があったため、江戸時代の文人たちが近くに他の七福神に由来する神社・仏閣を探し、作り上げたもののようです。
余談ですが、七福神については以前読んだ、高田崇史氏のQEDシリーズの2巻に、六歌仙と七福神の因縁について書かれた面白い話があるので、興味がある方は参考になさってください。
かの天海上人が黒幕で出てきます。
われもこう
ふよう
こちら御成座敷という建物。
有料で貸し出しをしています。内部はわかりませんでした。和室が数部屋あるようです。
もみじあおいの大きな花の奥に、池が出てきました。園内を南北に分断すように細長く池があります。庭園の演出というより、水辺の自然を再現した存在と思う方がよさそうです。
がまのほが立っています。まさに水辺の風景です。
階段をあがったところにある桑の茶屋跡。
今では何もありませんが。
名前が定かではない野の植物たち
池を渡った側、入口より一番奥にあたるところには、石碑が集中的に配されています。
自分は植物をメインに園内を観察してしまいましたが、これを副題として見回ってもよかったと感じました。やはり1度目の来園で全てを見ることは不可能ですね。
今回渡った橋以外にも、数か所橋はあります(3か所)。池の幅の違いもありますが、全て形が違うので、どういう橋がかかっているのか見てみると楽しいですよ。
にわふじ
すすき
池の南端部の藤棚から見る園内。
花菖蒲のきれいな水生植物園もあります。
このエリアは5月がお勧めですね。
ふじばかま
ながほのしろわれもこう
ざくろ(実)
百花園名物、萩のトンネルです。
全長はなんと30mもあります。ここが満開になったらすごいでしょう。
さすがに8月ではまだつぼみ。1カ月早かった。
まゆみ(実)
くずの棚を作るなんて考えたこともなかったですね!確かに花もきれいです。どうしても敵対視してしまうのはいつも困らせられているせいですけど。
ちょうどハスの花が植木鉢で咲いています。すでに中心部からは実が出来始めていますね。
とうごうぎく
みずひき
じんじゃー
あかしょうま
はくちょうげ
れんげしょうま
懐かしい雰囲気の売店ですね。
桔梗咲き
青掬水爪龍葉青風鈴
青打込弱渦波葉白丸咲
黄渦蜻蛉葉白丸咲
黄渦蜻蛉紺桔梗咲
黄抱並葉紅赤丸咲
江戸時代に品種改良された、伝統の朝顔の展示会が行われておりました。多くの種類がありましたが、ちょうど今咲いている品種の写真を掲載します。
品種と言うより、あさがおの花の形の分類ですね。
流れも、川幅によって表情が違います。花がなくとも緑もいいものです。
あざみ