水戸偕楽園 (茨城県水戸市)
水戸藩主第九代の徳川斉昭(烈公と称されます)が自ら構想を練り、創設させた庭園です。
偕楽園とは、孟子に出てくる「民とともに楽しむ〜」という下りから付けられた名前です。
現在は国指定の史跡名勝になっており、日本三大公園の一つでもあります。
また、梅の名所としても全国的に知られていますね。
現在は、美術館や歴史館を含めた約300haの敷地を偕楽園公園と呼んでいます。
その大きさは、中心市街地に位置する都市公園としては、NYのセントラルパークに次いで世界第2位の広さを有しているそうです。
梅の名所として知られている偕楽園ですが、実は優れた庭園です。
表門から入り、偕楽園の中心の建物である’好文亭’に続く道筋が、偕楽園を楽しむ本来のルート。今回はその正式なルートを通りながら、周辺の様子も紹介してきます。
学生時代に訪れて以来、10数年ぶりの偕楽園でした。
以前はこんなに広い公園ではなかった気がしております。
実際、後半紹介した桜川の好文亭のある偕楽園と反対岸側は、新しく整備しなおしている最中のようです。もともと広かった公園敷地を、有効利用しようとしていると思ってよいのかもしれません。
次回は自転車を使って公園全体を回る気で来ないと、全貌をお伝えするのは大変です。
また、水戸駅に向かう途中には弘道館や水戸城址もあり、こちらもお伝えしたいスポットでもあります。
まだまだ水戸は楽しめそうです。
へ行く
こちらが本来の正規の入り口の「表門」。
この周辺には駐車場がないため、最初にここから入っていくことは地元の人以外少ないと思います。
柱や壁が黒塗りのため、「黒門」とも呼ばれています。
ダイナミックなツゲの刈り込みが目をひきます。
また、ペット侵入禁止の看板も。当然ですがここは町の公園とは違いますので。でも基本的に無料なのはうれしい。
良く見たら、すごい立派な木たちに囲まれていたのですね。
一の木戸。ここより深山幽谷の世界に入っていきます。偕楽園では、パーツごとに植えられている樹木が決まっていて、その林立が返って日常と世界を区別しているようです。竹垣も凝っています。
木戸の先は、緩やかなカーブを描く下り坂。見てお分かりのように左は竹で、右は杉に。
道の右手にある大杉林。足元には笹が植えられています。
左側の孟宗竹林。立派な竹が天をつきます。地面は草も生えておらず、杉の葉が敷き詰められていました。管理が行き届いています。いい竹の子が出てきそう。
孟宗竹林が切れるところには、御簾垣が作られていました。上記の道を行くと梅林に出ますが、もうしばらく直進するルートを歩きます。
先は両側が杉林になります。
この付近の杉の方が太いようです。着いたのは午前中の早い時間ですが、この中を歩いているとまるで夕暮れのようなほの暗さがありました。
好文亭中門。細くなった園路の先にあります。ここもおしゃれな竹垣が作られています。植木屋としてもすごく参考になります。初めて見た作りです。
中門を抜けると、好文亭前の広場に出ます。ここより入場料(190円)を払い、好文亭に入ります。
受付より園路を建物に向かって歩きます。ここにも色々な樹木が植えられています。花はまだですが、’思いのまま’という咲き分けする梅の大木(左側の写真)もありました。
好文とは、梅のことを指します。中国の故事に「学問に親しめば梅が咲き、学問を廃すれば梅が咲かなかったと」いうところから付けられたそうです。
現在では、戦災で焼失したものを復元しています。中は靴を脱いであがります。
ふすまに描かれた花によって部屋の名前が付いています。上記は菊の間。部屋の中の造作も細かい場所で遊びがあり、部屋ごとに変化があります。
庭先に見える、本物の梅も木によって満開です。
建物を回るようにして移動してきて、梅林側に出てきました。
これより二階に上がって行きたいと思います。
二階に上がる階段は、なかなか狭く、暗く、ちょっと怖いです。自分は我が家の旧家で慣れていますが、身重の奥様は下で待ってもらうことにしました。
屋根は薄くスライスした木片にて貼り付けられています。
このほうが屋根自体は軽く出来ます。しかし、瓦と違って傷みは早いでしょうから、たまに修復するのでしょうね。
二階は狭い上、皆眺めを楽しみにきているので、そこで立ち止まってしまい、なかなか先に進めません。なので階段上がった直後から行列になっています。しかしこの建物、これほど二階に人が乗っていてもびくともしません。
先に見える千波湖の対岸先まで偕楽園公園は続きます。広い!
偕楽園は梅林のイメージが強いですが、こういう眺めを見てしまうと、よくできた庭園であることがわかります。ツツジなどの玉物の連続と、松の列植で庭を形作っています。一際大きい、’左近の桜’という桜の大木に花が付いたら見事な景色でしょう。
天井の杉板張りも凝っています。伝統的な張り込みをしており、板は右の板に乗るように隙間が出来て張り合わされているのです。昔の方の粋ですね。
畳のヘリも、藩主の間は葵の御紋になっています。おもしろい。
一周して下に降ります。
建物の最後を飾る茶室。
床柱の材質が非常に気になりました。あのねじれが入った木はなんでしょう?
こちらは建物を出て回り込んだ茶室の待合。ここまで作りこんであるところは少ないですね。
黒竹の渡しや、御簾、シュロ縄を使った雨伝い、参考になる材料使いです。
感心しながらようやくにじり口に。
正規のルートで好文亭を楽しんだ後は、正面に位置する’芝前門(しばさきもん)’から梅林方向に出て、園内の他の魅力的なポイントを紹介したいと思います。
寒竹という細い竹の林が門の前の園路を彩ります。
細かい竹だけで植栽を作るのも面白いです。
朝はまだいなかった’水戸の梅大使’というたすきをかけた美女達数人が梅をPR中。記念撮影に引っ張りだこで大忙しのようです。
3月上旬に訪れましたが、肝心の梅にはまだ早かったようで、3分咲きといったくらいでしょうか。それでも梅祭は盛り上がっており、お茶を振舞ったり、黄門様一行と撮影ができたり、時間が経つにつれ人手も多くなってきました。
御成門そばのトイレの男女を示す標識が可愛かったです。
水戸六名木の一つ’白難波’と、HNK取材中のため撮れなかった六名木の’虎の尾’。こちらはまだわずかしか花は開いておりません。
こちらは東門そばの、NHKの朝の中継コーナーでおなじみの定点カメラ。
こちらは東門の外。中の梅もすばらしいのですが、個人的にはこちらの杉やヒノキの大木の参道が好きです。
東門外に位置する常磐神社。光圀公と斉昭公が祭神として祀られています。
他に、能楽殿や資料館である義烈館、東湖神社などがあります。
その他色々な展示物もあります。周りを見て歩くもの楽しいです。
御成門から東門、さらには時計回りに南門方面に歩を進めていきます。この辺は斜面の下りになります。
好文亭からつながる’くぬぎ門’と、六名木の一つ’柳川枝垂れ’
こちらは多分白加賀の老木。梅は皮一枚でも生きていたりします。
道も随分細くなりました斜面の梅の彩りが、紅白できれいです。
特急スーパーひたちが来ました。さすが早い。写真がボケました。
こちらが南門。これで好文亭と、梅林に続く門は全てお伝えしました。
最初に紹介した、表門と中門の中間にある杉林の、その斜面の下に湧水している’吐玉泉(とぎょくせん)’があります。
好文亭内の茶室’何ろう庵(かろうあん)’でも用いられている清水です。大理石をくりぬいた石を据えています。国産の大理石ですがこりゃすごい贅沢。
ここまで紹介した内容が、梅林として有名な偕楽園のメインエリアです。しかし、実際には公園内の5分の1程度の敷地の紹介しかしておりません!
まったくとんでもなく広い。たしかに都市公園でこれほど広ければ世界で認められるでしょう。
全てをお伝えするのは、今後の取材次第ということにさせてもらい、ここからは車を停めた付近の公園内の風景を紹介させていただきたいと思います。
もともとこの低くなった地点は湧水地が多かったようで、その名残か池や流れが作られています。
ほころび始めた’緋梅’の濃い赤色が周囲を華やかにしております。
水際に枝垂れる枝が絵になりますね。
着物を着ておめかしした女の子達が多いと思ったら、午後からこちらで流し雛の儀式が行われるとのこと。時間があれば見ていきたかったのですが。
今回利用した桜山駐車場。大通りを横断するため橋を渡ります。エレベーターつきです。
上から見ると景色もよく見えます。景色の先に西門があります。
こちらは好文亭と反対方向にある護国神社。さらに奥には徳川記念館もあり、渓谷風に作られた公園内はモミジの植え込みがなされています。
こちらでは特別展として、雛人形の展示が行われておりました。数十点の雛壇が作られていて、豪華。
それぞれ顔立ちが違うところが面白いです。
公園センターと丸山。とにかく敷地内には、色々テーマ別に公園が作られています。
猩猩(しょうじょう)梅林から窈窕(ようちょう)梅林を向いた方向。
梅の木の間から、丘の上の好文亭を仰ぎ見ます。梅は冬至梅という種類。
遠く月池や、四季の原を臨みます。(左写真)
桜川から田鶴鳴(たづなき)橋へと続きます。(右写真)
見えづらいですが、魚がたくさん泳いでいます。
車を駐車した横の田鶴鳴梅林で咲いていた梅の花。半日歩き続けて車に戻ってきました。