〜フランス・暴走編〜
ヴェルサイユの工事には、常時30000人以上の人工と6000頭の馬が働いていそうです。
ですもの、桁外れなわけです。
しかし、たった半日しか来れないのでは、無念ながらこの程度が限界です。
思った以上にすばらしいところで、一度見ればいいだろうと思っていた自分に反省。
今度は、名庭をゆく、に書けるように隅々まで見て、もっと肌でヴェルサイユに触れてみたいと思います。
本物を見るのは楽しいことです。
ヴェルサイユ半日観光
2日目の午前中、オプショナルツアーでヴェルサイユ半日観光に参加しました。
本当は個人で電車で行こうと考えていたのですが、個人でチケットを購入するために受付に結構な時間並ばねばならないことが多いということと、電車だと半日では帰ってこられないだろうということ、そしてガイドさんに案内してもらえないことから、2回目となる奥様には申し訳なかったのですが、初心者二代目のためにバスツアーに参加しました。
朝の通勤用市バス。二台連結しています。長い!
朝7時ごろのオペラ座界隈。まだ人出はまばらです。今回は自分でツアー会社に頼んだものなので、集合場所に自力で向かいます。町はもっとゴミが散乱しているイメージがありましたが、東京よりきれいです。
バスは10分遅れで出発。コンコルド広場より高速に乗るため、地下になったレーヌ通りのバイパスに入ります。
このバイパスでダイアナ妃が事故死したことはあまりにも有名な話ですね。
今日もいい天気だ!朝日がまぶしい。のん気に思っているのは自分達だけのようです。皆さん通勤、通学に忙しくなってきました。自転車も多いです。
知らないうちに、朝の通勤ラッシュに巻き込まれていました。とっても入り組んでします。ちなみにこれはパリ中心部に向かう上りの方向。下り線は大したこと無し。
アパートタイプの集合住宅が基本のパリの住居では、ベランダ緑化はたしなみです。こちらには竹がプランターに植えられていました。
では、一戸建てはないのか?ありました。一戸建て住宅区域が。周りは柵に覆われ、その住宅地に入っていくためには、守衛さんのいる正面ゲートをくぐらねばなりません。ホントのお金持ちが住む区画ということです。
ブローニュの森沿いのハイウェイ。
この上りの大渋滞を見ると、東京とさして変わらない朝のあわただしさを感じます。
テニスの全仏オープン会場、ローランギャロスがそばにあるのですが、ここからでは後ろ姿を捉えたくらい。学生時代は欠かさずテニスの試合中継見ていました。他にもブローニュの森には観光スポットが色々存在します。
パリ市内から南西に約20キロ、ヴェルサイユの町に入りました。左写真、街路樹の奥に宮殿への入り口が見えます。
入り口目の前のバス専用の駐車場に到着。
駅から来るゲートの方では何やらテントが建っています。しかし石畳がきついところ。実際にここを馬車が走っていたのでしょう。
黒人のお土産売りの団体さんにすぐ捕まります。皆エッフェル塔のキーホルダーを主に売っているようで。
ヴェルサイユ宮殿
正門前。朝早いせいかそれほど混んではいません。フランス王室の紋章が、門の上に飾られています。
現在改装中ということで、表は足場が組まれてしまっています。ので全体がわからず。
上記写真の一番背の高い建物(王室の礼拝堂)の横から内部に入って行きます。すいているとはいえ団体客ばかり。うかうかしていると、別のツアーで話を聞いている状態です。
螺旋階段を上がり、広間に入って行きます。
ルイ14世時代、もともと小さな村だったこの地に宮殿が建てられました。時はフランス絶対王政時代、当時巨匠と呼ばれた面々が、半世紀に及ぶ年月と費用をかけ作りました。政情不安にあったパリを脱出したとも言えます。宮殿はバロック建築の傑作として世界遺産にもなっています。
しかし、宮殿を造るために不毛の地に木を植えて森を作り、セーヌ川の流れさえ変えたところはすごい!それが財政を逼迫し、後の革命につながっていくと考えるのは穿った見方ですかね。
礼拝堂の間。マンサール設計、義弟のコットが完成させました。
三位一体のモチーフの天井画は迫力あります。正面の窪んだ位置に書かれている聖霊降臨図は、窪んでいる場所なのに平面に見せるという高等技術で描かれているそうです。
かの、マリーアントワネットもここで挙式しました。
ここより、居室群に入ります。ホームズとともに大好きな、アガサ・クリスティーの有名探偵’エルキュール・ポアロ’の名の由来でもあるエラクレス(エルキュールは仏語読み)の間からはじまり、豊饒の間、ヴィーナスの間、ディアーヌの間、マルスの間…よく聞くとギリシャ神話の神様達の名前のついた部屋が続きます。
下記の写真のどれがその部屋かと言われると自信がないので、分かる範囲で補足を入れ、後は写真掲載とさせていただきます。
数多くの1級の画家や装飾家たちの作品をお楽しみください。
ヘラクレスの間の壁の模様、色の違う大理石を組み合わせて作られています。
宮殿内最大の暖炉。最初の部屋からインパクト大。
どの部屋もすばらしい絵画と共に、贅を凝らした装飾や素材が使われており、そちらを見ているだけでも忙しい部屋々々です。
ヴィーナスの間の彫刻たち。ルイ14世がモデルになっている絵画や胸像があちこちの部屋で見受けられます。
ディアーヌの間のベルニーニ作のルイ14世の胸像。
一際豪華さが増してきました。こちらはマルスの間。
一緒に移動する形となっている中国人ツアー客を率いているのは、どう見てもイタリア人のガイドさん。しかし、彼がしゃべっている中国語は、顔を見ずに聞いていると中国人の話し方とそっくり!
メルキュールの間。遺体を安置した告別の間でもあり、ルイ14世の遺体はここに一週間安置されたそうです。
豪華なタペストリーのかかるアポロン間。謁見に使われたことから別名玉座の間とも呼ばれます。
突き当たり角部屋に位置する戦争の間。コワスヴォー作の勇ましい騎馬姿のルイ14世のレリーフが目を引きます。
鏡の間
ヴェルサイユ宮殿で一番有名であり、見所である鏡の間に来ました。
この時間になると、周りは観光客だらけ!頭の上にしかカメラを向けられません。ですのであまりいい写真がなくて申し訳ないです。
通に言わせると、開館すぐに走ってここまで来て、まだ人がいないうちに写真を撮ってしまうのがいいとのこと。納得です。
ここは長さがなんと75mもある回廊で、17の明り取りの窓があり、その光を当時はとても貴重品だった鏡で壁面から反射させています。
クリスタルのシャンデリア、金の装飾に、銀の家具や調度品、天井画、これを見たバイエルン国王、ルードヴィッヒ2世が、妄想かき立てられたのもよくわかる作りであります。
どこにカメラを向けてもキラキラしているので、カメラもピントを合わせるのが大変そうです。なのでいつも以上にぼけた写真ばかり。
鏡は578枚作られ、組み合わされています。
現在でも、国賓を招く場所などとして使用されています。
こちらはお隣の角部屋’平和の間’。鏡の間を挟んで、戦争の間と対をなしています。
’王妃の寝室’。ルイ14世の后から16世の后アントワネットまで、5人の王妃が使用しました。
当時は公開出産が基本。皆が見守る中出産したそうで。よかった、うちは庶民で。
立憲君主制のシステムの中では、偉い人から順に王妃に服を着させました。本人が勝手に着てはいけないという不自由さは我慢。
2006年のS・コッポラ監督の映画’マリー・アントワネット’の中でもその朝の着替えシーンが出てきて参考になります。
ちょうど鏡の部屋の裏側に位置する、宮殿の内側に’王の寝室’があります。
ルイ14世、15世、16世が使われました。
他の部屋はマリー・アントワネットが自分の趣味にいじってしまいましたが、この部屋の装飾類は14世当時のままで、その時代の見識や格調の高さが評価されています。
こちらは夏の装飾で復元されています。
フランス・ロカイユ様式の傑作と言われる内装の’国王の執務室’です。
実際には、ここに書き切れない数の細かい部屋が存在しています。
その後も部屋が続きます。すいません、どの部屋か分からないので、写真のみ掲載します。
’貴人の間’(薄緑の壁紙の部屋)、’大会食の間’(赤い壁紙の部屋)、’衛兵の間’(立派な扉の見える部屋)、戴冠の間’と続いています。
階段の大理石もすばらしいです。
階段を下り、出口となります。
いつの間にか受付にも長い列ができています。
庭 園
二代目暴走す
「では、ここからは自由行動といたします。30分後にバスにお集まりください。」ガイドさんから指令が。
えっ後30分!この広大な庭園を見るには何と短い時間でしょう!
しかも改装中のため使えるトイレも限られていて、大渋滞。こりゃそれだけで30分経っちゃいそう。
「私、歩けないしゆっくりトイレ入って行くから、先に行っていて。」と奥様が気をまわしてくれました。
申し訳なく思いながら、これに乗らせてもらい独りバックをたすき掛けに庭園目指して走ります!
庭園の設計したのは、パリのチェイルリー庭園を作った造園家ル・ノートル。
直線の見通しを基準に対称形にデザインし、幾何学模様を描くように樹木を植え込んだり、毛氈花壇や幾多の彫刻やモニュメント、泉を配置した庭園は、フランス式庭園の最高傑作と言われています。
こちらは宮殿内から見た庭園。現在でも815ヘクタールあるという庭園は、直線距離2キロはあります。とにかく規格外の大きさに圧倒されます。
こちらは’南の花壇’。宮殿より出て、庭園に入る入り口はここしかありません。
ちなみにガイドさん的には、この近辺で記念撮影をして時間までにバスに戻って欲しかったのですが、その短時間に往復1,5キロを走破する愚か者がいようとは想像だにしなかったでしょう。
宮殿正面の’水の前庭’。
二つの対になる池があります。ブロンズ製の像はケレール兄弟の作。
水の前庭から階段を下ると、’ラトゥーヌの泉’に出ます。円形の美しい噴水の中心には、ギリシャ神話の女神ラトゥーヌがいます。奥に一直線に庭園が続きます。ここから見るとすばらしく広い庭園であることがわかります。
最初は怖気づいてここで引き返そうかと思っていました。しかし、ここで帰ったら次はいつ来られるのか?意を決して、この先にある十字型の’グランカナル(大運河)’手前にある’アポロンの泉’を目指すことに。
それでもここから500m先になります。
後20分くらいしかないのに、往復1000mの傾斜地を移動しようというのですからまごまごしていられません。
グラン・カナルまでの道行き。彫刻やトピアリーが目を楽しませてくれます。中央に緑地帯のある’緑の絨毯’と呼ばれる園路もあります。
また、この両側には同じような広さの庭園が迷路のようにあり、その箇所ごとにテーマがあったりします。王はそれを自分で案内して回るのが好きだったとか。
’アポロンの泉水’。テビュー作。アポロンが戦車に乗って天空に駆け上がる場面を描いています。
この泉の右奥に、’トリアノン(離宮)’や’マリーアントワネットの村里’があります。そこに行くまで今の行程と同じだけ歩かねばならず、今回は断念。
レンタサイクルや、乗り合いバス(のような)プティ・トランを使うと、庭園内を広範囲に移動することもできます。
この時期の一面の深い緑色と、空の青さに、水に映る彫刻の白さが映えます。しばし時を忘れて…。なんて観賞に浸っている暇はありません!急いで折り返します。何せ返りは全面上り坂になるのですから。
アポロンの泉から見る宮殿。この正面の2階部分が鏡の間になります。
んー、想像以上にゴールは遠いです。
わき目も振らず走りたいところですが、ふと横を見ると、きれいに手入れされた木々が、まさに迷路のように奥の路に誘惑をしてきます。どうせ帰る方向は一つ。ちょっと路を変えてみようかな…。しっかり誘惑にはまってしまいました。
素敵な泉を発見!きっとルイ14世も、こんな客達の反応を見るのが楽しみだったのでしょうね。
再び出発地、南花壇に戻ってきました。
奥様とも、水の前庭で合流。奥様曰く「バックをたすき掛けにして、すたすた走りながらあちこちカメラで写している怪しい東洋人が目に入ったからすぐにわかったわ。」
どうやらかなりマニアックな東洋人になっていたようでちょっと羞恥。
でもがんばったおかげで、短時間でこれだけのエリアを回れたと考えて、よしとします。
駆け込みでバスに間に合いました。
一人大汗です。水を持ってきてよかった。ここが日本なら自動販売機でいくらでも冷たいものを買えるのですが、そこがパリのつらいところ。
我々が最後かと思っていたのですが、その後時間をすぎても来ない方が一名。例の、ドイツでシャッターチャンスを狙った瞬間、思いっきりカーテンを閉めてくださった’おじさん’です。オプショナルツアーなので、同じANAの方と一緒になるとは思ってみませんでしたが、偶然にもこの方だけ一緒。
5分遅れでやってきましたが、トイレに並んでいて遅れたとのこと。自分なんぞトイレ我慢して撮影してたのに、悠々とトイレに並ぶならもっと早くしてほしいものです。だって、このツアーすぐ解散したらすぐトイレに行きたいのですから。そういえば、行きも集合時間10分遅れで来ましたね。場所がわからなかったとかで。
そりゃ、他の方から不満の声が出るのは当然です。知らぬは本人だけ。一番旅を楽しんでいるのでしょう。
’ヴェルサイユ宮殿を見ぬ者は、本当の栄華というものを知らない’シャトーブリアン(作家)